研究開発・新技術部門

  • 農産物、食品の抗酸化活性測定法「SOAC(ソアック)法」の開発 カゴメ株式会社 国立大学法人 愛媛大学 理学部
  • 先端インセクトテクノロジーによる革新的循環システムの開発 アビオス株式会社
  • 汎用性の高い「機能性大麦粉」の開発 国立大学法人 埼玉大学
  • 安価な産卵器の開発によるバイ貝の産卵促進 鳥取県栽培漁業センター
  • 大豆のかわりに新潟産玄米を使った食物アレルギー対応の「おみそ調味料」 長岡機能性食品創造研究会
  • 北海道産小麦「きたほなみ」を使用した製パン適性の高いパン用粉「TSUBAKI(つばき)」を開発 日清製粉株式会社 日清製粉グループ

最優秀賞

農産物、食品の抗酸化活性測定法「SOAC(ソアック)法」の開発 カゴメ株式会社 国立大学法人 愛媛大学 理学部

所在地 東京都中央区日本橋浜町3-21-1
電話 03-5623-8501
URL http://www.kagome.co.jp
e-mail takahiro_inakuma@kagome.co.jp

活性酸素を消去する「抗酸化活性」

酸素は人間にとって不可欠だが、体内に取り込むと一部が活性酸素に変化する。活性酸素は、体内の毒物や細菌、ウイルスを分解してくれる一方、多すぎると正常な細胞やDNAを攻撃し、動脈硬化、がんなどの病気の原因になる。また、紫外線や大気汚染といった環境要因、ストレスや喫煙といった生活習慣によっても増加することが知られている。
本来、人間の体には、活性酸素に対抗するため抗酸化作用という働きが備わっている。しかし、現代人は日常生活のいたるところで活性酸素が発生しやすい環境にさらされているため、健康を考えるうえで大きな問題になっている。
そこで多方面で研究が進み、野菜や果物のなかに抗酸化活性を有する物質が多く含まれることが解明され、さらに、これらの食品を効果的にとることで、活性酸素を原因とするさまざまな生活習慣病の予防や、老化を遅延させアンチエイジングにも有効に働くことが明らかになってきた。
これを受け、食品業界は高い抗酸化活性を備えた食品の開発、販売に積極的に乗り出しており、消費者の間でもより活性酸素の消去活性が高い食品を求める傾向が見られ始めている。

カロテノイドを含む農産物の抗酸化活性を正確に測定

一口に活性酸素といっても、違った性質を持つものがいくつかあり、効果のある抗酸化物質もそれぞれ異なる。たとえば、ブドウなどに多く含まれるポリフェノールも抗酸化物質のひとつで、活性酸素の一種フリーラジカルを消去する。赤や黄色の野菜に多く含まれるリコピンやβ-カロチンは、総称してカロテノイドと呼ばれ、一重項酸素という活性酸素に作用することがわかっている。
ところが、これまで農産物に含まれる抗酸化活性の測定法は、ポリフェノールに着目したものしかなかった。つまり、カロテノイドの抗酸化活性を正確に測る方法がなかったため、カロテノイドを豊富に含むトマトやニンジンといった農産物は、抗酸化活性が低く見積もられてきたのだ。
そこに着目してカゴメが愛媛大学と共同で開発したのが、カロテノイドを簡易的に測定できる「SOAC法」だ。これは一重項酸素により分解する指示薬と農産物中の一重項酸素を消去する抗酸化物質との競争反応に着目し、指示薬の吸光度を経時的に測定(右上の写真参照)するだけで一重項酸素の消去活性の算出を可能にした簡易な測定法だ。
この測定法の確立により、農産物の抗酸化活性を産地別、品種別に比較して、より活性酸素の消去活性が高いものを見つけることが可能になった。将来的には、高抗酸化活性という付加価値を持った農産物の開発やブランド化の促進につながり、ひいては農業の活性化や食料自給率向上への貢献も期待される。
さらに、農産物だけでなくさまざまな食品の抗酸化活性の測定も可能であるため、食品産業においても抗酸化活性の高い食品の開発が進むと考えられる。
すでにSOAC法は、100社を超える協賛企業や、国立研究所、大学などによって設立された食品の抗酸化に関する研究会「アンチオキシダントユニット(AOU)研究会」において、食品の抗酸化活性測定法のひとつとして採用されている。SOAC法の開発や同法を用いた抗酸化活性の測定は学術論文誌にも複数回掲載され、その科学的信頼性は高く評価されている。

抗酸化活性評価で被災地復興を支援示

現在、農林水産省、食品産業技術振興協会の主導で、東日本大震災の被災地復興を目的とした「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」が実施されている。
その事業のひとつ「生体調節機能成分を活用した野菜、果実生産技術の実証研究」のうち、「抗酸化能力の高い野菜類の開発」という課題では、SOAC法が抗酸化活性を評価する信頼できる測定法として採用された。信頼性の高い測定法により抗酸化活性を評価、自主表示することで宮城県産の農産物の消費を拡大させ、復興支援につなげることをめざしている。

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優秀賞

先端インセクトテクノロジーによる革新的循環システムの開発 アビオス株式会社

所在地 宮崎県宮崎市源藤町源藤853-28-403
電話 0985-88-5325
URL http://abies-japan.com
e-mail info@abies-japan.com

家畜の排泄物などの有機廃棄物は、通常微生物によって、2〜3カ月かけて堆肥となる。しかし、イエバエを活用して、わずか1週間で、有機肥料と飼料タンパク質が一度に生産できるという革新的なシステムを開発したのが、環境技術の企画、開発を行うアビオスだ。
まず、簡単に人工培養ができるイエバエの卵を排泄物に接種。孵化した幼虫が、排泄物を有機肥料に変化させる。この工程は、低農薬で高品質な有機農作物を作ることにも役立つ。幼虫自体も良質な国産タンパク源として活用できるので、従来、輸入魚粉に頼ってきた飼料をこれで補うことが可能となり、飼料自給率アップに寄与する。この肥料を農家で使用したところ、糖度上昇、収量増加などの成果が上がった。また幼虫を養鶏や養殖魚の飼料として使用したところ、成長促進、免疫力向上など、こちらも好結果が報告された。今後は事業拠点を拡大し、有機物の循環型社会モデルの普及をめざす。

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優秀賞

汎用性の高い「機能性大麦粉」の開発 国立大学法人 埼玉大学 大学院理工学研究科 教授 円谷陽一 教育学部 教授 川嶋かほる オープンイノベーションセンター 特命教授 東海林義和

所在地 埼玉県さいたま市桜区下大久保255
電話 048-858-9354
URL http://www.saitama-u.ac.jp/coic/index.html
e-mail coic-jimu@ml.saitama-u.ac.jp

埼玉大学は、大学における研究の成果や創出された知的財産を、地域や企業と共有し、新たな産業の芽を生み出すことをめざしている。
このたび注目したのは大麦。大麦に含まれる水溶性食物繊維は、整腸作用や動脈硬化予防、免疫調整機能など、生活習慣病予防に効果があると内外の研究成果でも明らかになっている。しかし、おいしくないというイメージや、加工食品にしづらい性質など、さまざまな要因が重なり、ここ50年で栽培量は10分の1以下に激減。
そこで大麦の需要拡大に寄与するため、水溶性食物繊維をより多く含む大麦新品種を使用し、小麦粉との配合特性に優れた「機能性大麦粉」を開発した。
さらにそれを原料とした「おいしい大麦食品」を考案した。独自技術で小麦粉に近い粒子径に粉砕した大麦粉は、小麦粉、米粉に次ぐ第3の穀物粉としての注目度も高く、学校給食や高齢化社会の健康維持力強化にも期待が寄せられている。

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優秀賞

安価な産卵器の開発によるバイ貝の産卵促進 鳥取県栽培漁業センター

所在地 鳥取県東伯郡湯梨浜町石脇1166
電話 085-834-3321
URL http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid
=154187#itemid648893/
e-mail takeyuki.oota@pref.tottori.jp

鳥取県西部などの祝い事に欠かせないバイ貝は、水深30メートル以浅の海域に生息する巻貝。かつては県内漁獲量が80トン以上あったが、1985年ごろから環境ホルモンの影響で資源が枯渇。その後、環境改善がなされ漁獲量は上昇したが、乱獲などによる減少が再び問題となり、2010年に「鳥取県バイ資源回復計画」を策定。その一環として効率的に産卵を促す産卵器をセンターが開発した。
バイ貝は海底の貝殻、流木などに卵塊を産みつけるが、海底にこのような基質が不足している場合、成熟しても産卵を行わない習性がある。そこで、安価で手に入りやすい素材であるプラスチックパイプで産卵器を開発(左上の写真参照)。2012年、これを用いて美保湾で漁業者が促進に取り組んだところ、約1.9億粒の産卵に成功した。
安価かつ簡易とあって、漁業経営が厳しいなかでも「設置したい」という声が高まった。今後は県内全域に普及を拡大し、漁獲量の増加、さらにはバイ貝の全国販売をめざしている。

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優秀賞

大豆のかわりに新潟産玄米を使った食物アレルギー対応の「おみそ調味料」 長岡機能性食品創造研究会

所在地 新潟県長岡市脇川新田町字前島970-100
電話 0258-66-0446
URL http://www.eco-rice.jp/
e-mail eco-net@aria.ocn.ne.jp

日本人の主食である米の機能性に着目し、食物アレルギーを持つ人でも食べられる食品を研究開発している長岡機能性食品創造研究会。
バリアフリーな食品を開発するきっかけとなったのは、新潟県中越大震災および東日本大震災。多くの人が避難生活を送るなか、食物アレルギーを持つ人が食べられる食事の供給、備蓄がない事態に直面した。日本伝統調味料のみそやしょう油を大豆からではなく、玄米を原料にすることで、さまざまなアレルギー食開発が可能になる。また、米生産者にとっては、戸別所得補償制度を活用して米の生産ができ、多収米などを効率的に作付けできることで、水田をフル活用できる。
また、みそは主に輸入大豆を原料にしているが、その原料を新潟産玄米に切り替えることで、使用分だけ確実に食料自給率が上昇する。一般の人でもおいしく食べられる製品は、全国への展開が期待されている。

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優秀賞

北海道産小麦「きたほなみ」を使用した製パン適性の高いパン用粉「TSUBAKI(つばき)」を開発 日清製粉株式会社 日清製粉グループ

所在地 東京都千代田区神田錦町1-25
電話 03-5282-6650(広報部)
URL http://www.nisshin.com/

国内産小麦流通量においてトップシェアを誇る日清製粉。全体の約4割を占める高いシェア率やその経験を生かして行っている小麦粉の開発、販売が、国内産小麦の普及に大きく貢献している。
現代日本の食文化を大きく支える小麦。食料自給率向上への関心が高まる昨今では、国産小麦に対するニーズも上昇している。特にパン業界ではその傾向が顕著だ。しかし、国産小麦は製パン適性の高い品種の流通量が少ない。この現状を打破するため、流通量が多く品質安定性に優れた北海道産小麦の代表品種「きたほなみ」を使用した製パン適性の高い「TSUBAKI(つばき)」の開発に着手。3年を費して、原料小麦は「きたほなみ」100%を使用し、パン用粉(小麦粉、粉末麦芽、増粘剤(ペクチン))を開発。ソフトな食感、老化耐性など、国産小麦をパンにした場合の課題点をクリアした製品は食パン、菓子パン、ハード系など幅広い商品の製造を可能にし、食料自給率向上をめざす方針だ。

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