研究開発・新技術部門

  • バイオサーモメーター 〜生鮮魚介類のリアルタイム品質可視化技術〜 国立大学法人 東京海洋大学
  • エゴマの食プロジェクト 株式会社 浅沼醤油店
  • 業界初7条刈コンバイン「HJ7120」の開発 井関農機株式会社
  • 食事制限者も食べられる非常食「はんぶん米」の開発 有限会社 エコ・ライス新潟
  • グルテンを使用しない米粉本来の味と可能性の追求 お米のケーキ屋さん リトルバード お米のクレープ専門店 ジャパンクレープ
  • ジャガイモ粕を活用した牛用発酵TMRの開発 タイセイ飼料株式会社
  • 芯ごとまるごとコーンドリンクの開発と量産化 日本牛乳野菜株式会社
  • 盛夏に新ソバが賞味できる「ソバ春まき栽培」技術の開発と品種「春のいぶき」の育成 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
  • 稲発酵粗飼料専用の水稲新品種「たちすずか」の育成 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
  • 雑海藻ツルアラメの高付加価値化と商品力向上による食材としての流通促進の取組 国立大学法人 弘前大学 大間漁業協同組合
  • 野菜と健康の情報発信基地「ベジマルシェ」〜野菜販売と健康診断の連動による国産野菜の消費拡大〜 Farm to Wellness倶楽部(デリカフーズグループ)

最優秀賞

バイオサーモメーター 〜生鮮魚介類のリアルタイム品質可視化技術〜 国立大学法人 東京海洋大学

所在地 東京都港区港南4-5-7
電話 03-5463-0389
URL http://www.kaiyodai.ac.jp
e-mail hsnaoko@kaiyodai.ac.jp

一目で鮮度を見分けられる仕組み

消費者の70%が、食品の消費期限や賞味期限に注意を払っているといわれる。傷みやすい鮮魚となればなおさらで、おいしさを求めて「活きのよさ」を買い物の基準にしている消費者が圧倒的多数を占める。
こうした声を受けて、店頭では鮮度判断の参考として加工日、消費期限などを表示しているが、表示の改ざんなどによる食中毒事件がなくなったわけではなく、水産業界にとって信頼できる表示をどう実現するかが大きな課題とされてきた。
こうした背景から、東京海洋大学の「バイオサーモメーター」の開発が始まった。めざしたのは、一般消費者でも一目で魚介類の鮮度を確認できる仕組みだ。

酵素反応の可視化により温度履歴とK値を見える化

生鮮物の鮮度は、主としてその生鮮物が置かれている環境温度に依存することが知られている。したがって、生鮮物の鮮度および品質を管理する鍵は温度管理であるといえる。また、生鮮魚介類の鮮度指標としてK値が初期鮮度評価として有効である。K値とは筋肉中でエネルギー代謝の主役となっている物質であるATP(アデノシン三リン酸)が死後の時間経過とともに分解されて、イノシン、ヒポキサンチンの割合が増えていく程度を数値化したものである。この値は官能的に評価された「活きのよさ」と良い相関があることから、水産業界で多用され、信頼度が高い鮮度指標として知られている。
しかし、魚の種類によって生で食べられる限界K値は異なり、特にタラ、タイ、カツオなどは大きくはずれる。したがって現在のK値の表示だけでは消費期限までにどれくらい時間があるかを判断することは難しい。そこで、食品流通安全管理専攻の濱田奈保子教授らは温度履歴とK値に基づく消費期限を可視化する仕組みを考案した。これがバイオサーモメーターである。バイオサーモメーターの色調を見れば、これまでのバイオサーモメーターと同じ条件下に置かれた魚の温度履歴が積算温度という形で瞬時にわかり、生食限界における色調との差を求めれば、消費期限までの期間が求められる。

不測の事故も克明に表示

はじめ黄色だったバイオサーモメーターの色調は、酵素の反応にともなって次第に紫色に変化していく。時間が経てば経つほど、紫色は濃くなり、あらかじめ作っておいた魚ごとの食べごろ判定チャートと照らし合わせることで、生食できるのか、また、消費期限までどれくらい時間があるのかを判別できる。
また、温度が高くなればより色調は濃くなるため、産地で発泡スチロール内や魚のエラにバイオサーモメーターを差し込んでおけば、運送中の冷凍車の故障や陳列中の温度管理の不具合があった場合は、一気に紫色に変化して一目で不測の事態があったことを見極められる。
バイオサーモメーターの実証試験の現場では、生産者や卸市場などの流通業者が、温度管理の重要性の認識を高め、常温で放置しない、氷の融解状況を気にかけるなど、行動の変化が見られているという。

食品のブランド化を進め地域振興にもつながる

鮮度の判定が手軽にできれば、鮮魚類を安心して販売・購入・消費できるようになり、その過程で廃棄される食品が減ることが期待できる。また、この技術を魚介類のトレーサビリティに導入することで産地と品質がともに保証された水産物が流通するようになれば、国産・地域ブランドを高め、食料自給率を押し上げることも期待される。
バイオサーモメーターを付加した生鮮野菜の流通試験も予定されており、産地と品質が保証された物流システムを確立して、地域振興に役立てようとする取組が、全国に広がり始めている。

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優秀賞

エゴマの食プロジェクト 株式会社 浅沼醤油店

所在地 岩手県盛岡市中ノ橋通1-8-2
電話 019-622-2580
URL http://www.asanumashoyu.co.jp/
e-mail web@asanumashoyu.co.jp

大正3年(1914年)創業の浅沼醤油店は、シソ科の植物エゴマを用いて、大豆・小麦アレルギーの人でも食べられるしょう油風味の調味料「エゴマ醤油」を開発した。古来、エゴマの種子からとれる油は食用や塗料用として用いられてきた。ナタネ油の登場とともに食用とされることはなくなっていったが、1990年代にα-リノレン酸をはじめ、健康によい成分を含んでいることが注目され、エゴマ油の消費量が高まった。
浅沼醤油店は油の搾りかすにタンパク質などの栄養が豊富に含まれたままであることに着目。これを発酵、醸造することで、エゴマ醤油の開発に至った。
さらりとした口当たりで色味もよいエゴマ醤油は、消費者の評価も高く、発売以来販売量は順調に推移している。これまで廃棄されてきた未利用資源を有効活用したことに加え、同社の取組などからエゴマの作付面積も年々拡大しており、地域農家の意識高揚、ひいては食料自給率向上にもつながっている。

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優秀賞

業界初7条刈コンバイン「HJ7120」の開発 井関農機株式会社

所在地 東京都荒川区西日暮里5-3-14
電話 03-5604-7709
URL http://www.iseki.co.jp/
e-mail repre@iseki.co.jp

井関農機は、2009年、日本で初となる一度に7列の稲を刈り取れる7条刈コンバイン「HJ7120」を開発、翌10年3月に発売した。
経営規模の拡大を検討する農家が増加するなか、コンバインの大型化・高効率化が望まれていたが、これまではトラックへの積載寸法(横幅)の制限から、自脱型(刈り取りながら脱穀する)コンバインは、6条刈が限度とされていた。6条刈の作業効率を高めるためにはその分、作業速度を速くしなければならず、オペレータの技量が求められ、使い手を選ぶ機種となることが懸念されてきた。
そこで同社では幅広となった刈取部の一部の脱着と、折りたたみによるコンパクト化のメカニズムを開発。5トントラックで圃場間を移動できるサイズで7条刈を実現した。
7条刈の登場は、オペレーションの問題を払拭し、作業速度を15%抑えても、6条刈に比較して同等以上の作業効率を達成した。これにより、農家の生産コストの低減や作業時間の短縮を促し、食料自給率の向上の一助となると期待されている。

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優秀賞

食事制限者も食べられる非常食「はんぶん米」の開発 有限会社 エコ・ライス新潟

所在地 新潟県長岡市脇川新田町 字前島970-100
電話 0258-66-0070
URL http://www.eco-rice.jp/
e-mail eco-net@nekonet.ne.jp

タンパク質のグルテリンの含有量が、通常品種の半分米として期待されている新形質米「春陽」。エコ・ライス新潟では、この春陽を原料として、誰もが安心して食べられ、長期保存が可能なアルファー米の研究を進めてきた。その過程で、添加物を加えることなく、リンやカリウムの量も抑える技術を考案し、安全かつ良好な食味を持つアルファー米「はんぶん米」の開発に至った。
契機となったのは、2004年の新潟県中越地震。食事制限者が食べられる非常食がないという事態に直面したことだった。厚生労働省の調べでは、人工透析患者は全国に約30万人、食事制限が必要な人は約100万人に上り、今後高齢化が進めば、さらに増えると見られている。現在、東京都が9万食を備蓄しているのをはじめ、全国の自治体で備蓄が進んでいる。
同社では春陽の作付面積をさらに増やし、食事制限者に対する米の需要を喚起し、食料自給率の向上に貢献することをめざしている。

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優秀賞

グルテンを使用しない米粉本来の味と可能性の追求 お米のケーキ屋さん リトルバード お米のクレープ専門店 ジャパンクレープ

所在地 愛知県豊橋市駅前大通り3-9
電話 0532-57-2307
URL http://little-bird.ocnk.net
e-mail littlebird.jp@gmail.com

お米のケーキ屋さんリトルバードは、10年間にわたり国産の米粉100%にこだわり製品を開発している。店内・製造工程すべてにおいて、小麦はもちろんのこと、グルテン(小麦に含まれるタンパク質)も一切使わないケーキやクレープなどを商品化。地産地消に積極的な地元農家と協同で、米粉のかりんとう、玄米入りホットケーキ、米粉クッキーなどの開発も進めている。
グルテンをまったく使用しない製品は、小麦アレルギーがある消費者に喜ばれるだけでなく、米粉本来の香り、食感、甘味が最大限に引き出されるため、小麦の代用品ではなく、国産食材を活用した新たな味として認知されつつある。
スイーツに限らず、から揚げ粉、たこ焼き用ミックス粉、お好み焼き用ミックス粉、ホットケーキミックスも開発・販売。家庭で手軽に米粉レシピを楽しめる機会を提供し、米粉の普及、ひいては米の需要を拡大し、食料自給率の向上を促すことが見込まれる。

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優秀賞

ジャガイモ粕を活用した牛用発酵TMRの開発 タイセイ飼料株式会社

所在地 北海道河東郡音更町字下士幌 北2線東29-5
電話 0155-31-3731
URL http://www.taiseishiryo.jp/
e-mail t.matsumoto@taiseishiryo.jp

タイセイ飼料は、1992年の設立以来、飼料の専門会社として北海道十勝地方の畜産農家の要望に応え、一般の配合飼料・牧草に加え、非遺伝子組換飼料や無農薬飼料、オーダーメイドの発酵TMR(Total Mixed Ration)などを提供してきた。
これまで牛用飼料には、でんぷん源として主に海外から輸入したコーンやマイロ、大麦が用いられてきたが、同社では、飼料を北海道産のジャガイモを扱う食品加工工場で一年を通じて大量に発生する食品残渣のポテトピールに一部置き換えることで、飼料の自給率向上につなげている。
また、これまでポテトピールは廃棄物として処理されていたため、食品工場では、その処理費が発生していた。それも、同社が飼料原料として有償で引き取るため、食品工場の負担が大きく軽減した。飼料原料としても安価なポテトピールは、飼料価格を下げることができ、畜産農家の負担も軽減している。
ポテトピールを発酵飼料にすることにより、牛の飼料摂取量が向上すると好評を得ており、今後の普及が期待されている。

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優秀賞

芯ごとまるごとコーンドリンクの開発と量産化 日本牛乳野菜株式会社

所在地 熊本県熊本市新町1-10-27
電話 096-359-6250
URL http://www.jmv.co.jp/
e-mail jmv@ceres.ocn.ne.jp

日本牛乳野菜では、野菜や果物、穀物などの皮や茎、種までナノレベルで粉砕する独自技術を持ち、材料をまるごと加工し、栄養価が高く、原材料の残渣がゼロで、環境に負荷のない飲料の研究開発を行ってきた。
同社ではこれまでにケールや玄米などを原料とした、栄養価が高く食味にも優れたドリンクを発売してきた。今回トウモロコシに注目、芯まですべて粉砕して飲料にした「まるごとコーンドリンク」を開発した。トウモロコシの芯には、豊富な食物繊維、ビタミン、ミネラルが含まれている。同社は味や保存性にも工夫を施し、幅広いニーズに対応する商品として製造、販売することをめざしている。
原料には国産のトウモロコシを使用。芯に至るまでまるごと利用し、原料ベースで3倍の利用率を達成した。穀物を利用した新たなカテゴリーの食品を開発することで、いままでにない市場を構築し、食料自給率の向上につながることが期待される。

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優秀賞

盛夏に新ソバが賞味できる「ソバ春まき栽培」技術の開発と品種「春のいぶき」の育成 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター

所在地 熊本県熊本市合志市須屋2421
電話 096-242-7530
URL http://konarc.naro.affrc.go.jp/
e-mail q_info@ml.affrc.go.jp

九州・沖縄地域の農業・食品産業技術の研究開発を行っている農研機構 九州沖縄農業研究センターでは、九州の温暖な気候を生かして、ソバを3月中旬から4月上旬に播種して5月下旬から6月上旬に収穫する、新しい「春まき栽培」技術を開発。春まきに適した新品種「春のいぶき」が完成した。
これにより、夏の需要期に収穫したての新鮮なソバを消費者に提供できるだけでなく、従来の秋まき栽培で常に懸念されていた秋の長雨や台風といった天候の問題を避けることができ、安定的な収穫が可能になった。
春まき栽培は生育期間が60日程度と短く、普通期水稲の前作やサトウキビの後作など、基幹作物の前後に作付けすることができ、耕地を効率よく利用することができる。また、耕作放棄地にも導入が可能だ。
今後は、同様の気候条件下にある西日本のより広範な地域への普及に努め、収穫量の増加と、特産作物としての認知度向上をめざしていきたい考えだ。

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優秀賞

稲発酵粗飼料専用の水稲新品種「たちすずか」の育成 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター

所在地 広島県福山市西深津町6-12-1
電話 084-923-4100
URL http://wenarc.naro.affrc.go.jp/
e-mail www-wenarc@naro.affrc.go.jp

地域農業の課題解決と活性化をめざして研究開発を行っている農研機構 近畿中国四国農業研究センターでは、「稲発酵粗飼料」に向く水稲品種の改良に取り組み、新品種「たちすずか」を完成させた。稲発酵粗飼料とは、モミと茎葉を梱包・密封して発酵させ長期保存を可能にした飼料。従来の品種は牛が消化しづらいモミが多く、栄養分のロスが問題とされていた。たちすずかは、モミの量を従来の約3分の1に抑えることに成功し、より飼料適性の高い品種として期待されている。
開発の背景には、畜産と稲作の両現場を悩ませていた問題があった。それは、畜産現場における「輸入飼料高騰による自給飼料生産拡大への期待」と、稲作現場における「米の消費量減少や耕作放棄地の拡大」である。たちすずかは、比較的安価かつ高い飼料適性を備えた自給飼料の確保と耕作放棄地の活用、水田環境の維持を同時に実現する品種だ。
今後は府県の研究機関と連携し、作付面積拡大を図るとともに、種子生産を行う法人を募るなど、たちすずかの包括的な規模拡大を図る予定だ。

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優秀賞

雑海藻ツルアラメの高付加価値化と商品力向上による食材としての流通促進の取組 国立大学法人 弘前大学 大間漁業協同組合

所在地 青森県弘前市文京町1
電話 0172-39-3436
URL http://siva.cc.hirosaki-u.ac.jp/
e-mail ykato@cc.hirosaki-u.ac.jp

弘前大学教育学部食物学研究室では、大間漁業協同組合と連携して、マコンブの生育を阻害する雑海藻「ツルアラメ」の食用に関する研究を実施している。強いエグ味が食用に向かないとされてきたが、漁獲時期によって食用に耐えうる食味を持つことが同研究室のポリフェノール成分分析により判明。さらに、健康機能も解明し、高付加価値化によって、新たな海鮮食品として流通促進を図っている。
本来ツルアラメは、青森県南部が北限とされてきたが、近年の海水温上昇で、重要な海藻資源であるマコンブなどの藻場がある大間町沿岸でも繁殖が確認され、駆除などの対策が急務とされていた。本研究により、駆除・廃棄の対象が一転して食品として流通可能になったことの意義は大きい。現在、試作販売品としてサラダや漬物、ラーメンなどとして流通を始めている。
今後、研究の推進と成果の発表を継続することで、ツルアラメの健康機能を消費者にPRするとともに、商品数も拡充予定。大間町の新たな特産品として期待されている。

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優秀賞

野菜と健康の情報発信基地「ベジマルシェ」〜野菜販売と健康診断の連動による国産野菜の消費拡大〜 Farm to Wellness倶楽部(デリカフーズグループ)

所在地 東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル2F
電話 03-6277-6474
URL http://www.vege-marche.jp/
e-mail info@vege-marche.jp

デリカフーズグループが展開し、「農場から食卓へ」を標榜するFarm to Wellness倶楽部は、2010年、野菜と健康のショールーム「ベジマルシェ」を赤坂のアーク森ビルにオープンした。野菜が持つ機能性を重視し、売り場は「抗酸化力」「免疫力」「解毒力」といったカテゴリー別に展開。野菜それぞれの機能を分析し、野菜の価格を設定している。
店内では、各種健康診断も実施しており、保険証がなくても受診できる「ワンコイン健診」では看護師と管理栄養士がていねいにアドバイス。健診、食生活の提案、野菜の購入ができるワンストップサービスで個々の適切な食生活の実現を支えている。また、月に6回「野菜のチカラセミナー」を行い、野菜を試食しながら、おいしい食べ方、季節感、野菜の力と食の重要性を広く流布していきたい考えだ。
さらに、野菜の研究から、国民の健康増進につながる農業の発展、食の提供を推進。「チカラのある野菜」の紹介をしていく新たな店舗展開も視野に入れている。

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